荒木新太郎

 

“ダントツ”三郎丸三郎率いる光高校のエース。最初は他校野球部の球拾いとして登場、ちょっとコミカルな表情と動き、ちゃっかりした言動(いつのまにか当然のごとくダントツのトラックの屋根に便乗してたりとか)が可愛くて、名なしのうちから強烈な印象を残してくれました。『大甲子園』、とくに対明訓戦では里中とのそっくりネタ(兄弟疑惑)と両手投げくらいしかクローズアップされなかったのですが、彼の本領はちゃっかり・がめつい・腹に一物ありそう(これまで弱小とバカにしてたっぽい光野球部に唐突に入部することにしたり、わざとヘボ球ばかり投げてチームメイトにもしばらく力量を隠していたり。後者は一応後で理由を話しているもののどうも説得力がない)、にもかかわらず愛嬌あふれる態度と笑顔のせいでどうにも憎めないところにあるように思えます。『大甲子園』で「里中と似てる」ことを強調したいためか「気が短い」ことにたびたび言及されてましたが、『ダントツ』時代は気が強いには違いないものの、相手の胸倉取ったり怒鳴ったりというストレートさではなく、笑顔で相手をおちょくったりする強心臓っぷりとして表現されていた気がします。

「笑顔で相手をおちょくったりする」というと初期の里中ぽい感じですが、里中の場合いかにも慇懃無礼な笑顔と言動が相手の神経をもろ逆撫でしてた(おそらく里中的にはおちょくってるという感覚さえない。最初から相手を怒らせることを意図してるか本気で言ってるかのどちらか)のに対し、荒木の場合はちょっとコミカルな可愛さ・愛嬌があるぶん何かごまかされてしまう印象です。ある意味里中よりタチ悪いかも(笑)。

そんな二人の性格の違いがもっともわかりやすいのが敬遠に対する反応。里中の敬遠嫌い、敬遠との相性の悪さは高一夏地区予選初戦(対白新戦)でリリーフ直後いきなり敬遠を命じられてグローブを地面に投げつけた時点に始まっています。記念すべき公式戦初登板―高校生活のみならず彼の野球生活全体を通して―でしょっぱなから敬遠を指示されればキレるのも無理からぬところ。その後も同年秋には横浜学院の土門をいやいや敬遠して、いやいやゆえに気の抜けた敬遠球をかっとばされ、翌年夏の弁慶戦でも弁慶きっての強打者・武蔵坊に敬遠球をホームランされている。基本強気な里中だけに敬遠という行為(これも立派な戦術なんですが)とは馴染まないのかもしれません。

一方の荒木はというと、対一番星高校戦で4番佞武多(ねぶた)の打席でダントツから敬遠の指示が出たとき、「歩かせろってそんな」と不満の声をあげたものの、一瞬あとにはへらっと笑って「でも勝負は勝たにゃ〜」とあっさり敬遠を了承。一番星の監督が「あ、荒木 勝負しろい」とがくっとくるほど。
その敬遠の内容もまた、佞武多と光の捕手竹馬の身長差がありすぎて通常のウエストボールが投げられない(佞武多が届かないような球を投げれば竹馬もまず捕球できない)ためワンバウンドのボールを投げる(二球目で無理やり打ってくる→ファール)、佞武多の背中の向こう側に投げる(佞武多は正面向いて打席に立つことで背中側に投げられなくする)、ゴロを投げる、と進化を遂げる(笑)。最後のゴロなんて投手のプライドは、と言いたくなるような球ですが荒木は笑顔のまま。むしろ面白がってる様子さえあります。そして最終的に竹馬とのずっこいコンビネーションで見事三振に討ち取ったという・・・。里中なら相手が正面向いて打ちにきたあたりで「勝負に行かせてくれ」と言い出すことでしょう。里中にはないこのしたたかさが荒木独自の魅力でしょうね。『大甲子園』ではむしろそのへんの対比を描いてほしかった。山田を臆面もなく連続敬遠する荒木に里中が「おまえプライドないのか」とキレかけるとか。

ところで『大甲子園』では1年生ということになってる荒木ですが、『ダントツ』を読むと荒木入部以降に入学式のシーンがあるので、甲子園大会のときは少なくとも2年生にはなってないとおかしい。別に里中と2歳差設定にしなくてはならない必要性はないので、単に水島先生の勘違いなんでしょうけど。


(2012年4月13日up)

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