−雨の日 2−

 

放課後、駅前に野球雑誌を買いに出た里中は、店を出ようとしたところで不意打ちの雨に見舞われた。

最初はぽつぽつ程度だったのがたちまち豪雨となり、道行く人々はあわてて近くの軒先に走り込んでゆく。

こんなことなら傘を持ってくればよかった。どうやら当面止む気配はなさそうだ。どうせ練習は中止だろうが、このまま足止めをくっていると夕飯にも間に合わなくなる。連絡もせず夕飯に遅刻したら下手するとメシ抜きにされかねない。

里中はあたりを見回したが視界の範囲に公衆電話は見当たらなかった。駅まで走るか?しかしこの雨じゃせっかく買った本が台無しになる。事情を話して本屋で電話を借りるべきか――。

迷いつつしばらくの間雨にかすむ商店街の街並みを睨んでいた里中は、見慣れたシルエットが小走りに近付いてくるのに気づいて目を見開いた。

「あ、いたいた。里中〜〜!」

明るい声を張り上げながら駆けてくる少年の姿に周囲の雨宿り組が目を丸くしているのは、「彼」がこの夏の甲子園優勝校のキャッチャーと悟ったゆえか、それともその異様な出で立ちのゆえか。

「山田・・・ひょっとして迎えに来てくれたのか?」

「急に降りだしたからな。きっと本屋で立往生してるんじゃないかと思って。さあ帰ろう。おまえの分も持ってきたから」

言いながら山田が小脇に抱えていた「もの」を笑顔で差し出した。山田が身に付けているのとお揃いの、雨合羽=B

――ああやっぱりそれかよ!そんなことだろうと思ったよ!

合宿所の面々は誰も止めてくれなかったのかと里中は内心歯噛みした。これなら男同士で相合傘の方がまだマシだ。そんな里中の煩悶など知らず山田はにこにこ笑っている。

・・・・・・ええいちくしょう!苦楽も・・・恥も、共にしてこそのバッテリーじゃないか!

「サンキュー山田。助かったよ。・・・さあ帰ろうぜ、一刻も早く!」

「おいおい里中、そんなにあわてるなよ。足を滑らせるぞ」

山田の声を背中に聞きながら雨の中を駆け出した里中は、これからは常に傘を持ち歩くようにしようと固く胸に誓ったのだった。


「助かったよ」の後の「・・・」あたりで里中は“雨合羽”を装着?してるわけですね(笑)。時期的には高一秋季大会の後くらいのイメージです。

(2010年4月23日up)

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