98年日本シリーズ(西武対横浜)

 

前年につづく西武―主人公チームのリーグ優勝という現実を受けて、きっちり描かれることになった98年の日本シリーズ。しかも相手が土門のいる横浜ベイスターズとあって、当然ながら試合は山田と土門の対決が最大の山場となります。
この晴れの舞台に際して、土門の実力もさらにパワーアップされ、カミソリシュートなる新球を身につけた設定になっている。このカミソリシュートに5球しか投げられないという制限がついていることが、さらに物語を盛り上げる効果をあげています。

とはいえ二人の対決以外がないがしろにされているわけではない。特に横浜側は名リードで土門を引っ張る谷繁を筆頭に駒田の悪球打ち、佐伯の謙虚な打法など他選手の活躍もしっかり描かれ、土門もあえて送りバントをしたり乱暴な走塁で野手の足を払ったりと要所要所でチームメイトのアシストを行っていて、「ひとりひとりが自分の役割を知っていてそれが出来るチーム・・・ベイスターズは確かに強い!!」という山田の感慨に凝縮されているように、「フォアザチーム」の精神が前面に出たプレーを展開しています。

一方の西武も先発の獅子丸が体力面精神面でたびたび乱れそうになるのを、山田が諭したり時間稼ぎしたりで上手くなだめ鼓舞して支えてゆく。知三郎への継投のタイミングといい、打者山田の活躍以上に捕手山田の力量が生きた試合だったんじゃないでしょうか。


・第一戦、横浜は土門、西武は獅子丸が先発。放送席ゲストのうち二人は岩鬼&三太郎と、メインどころをオリジナルキャラで固めたなかなかの豪華キャスト。
ちなみにもう二人のゲストは元パ・リーグ広報部長伊東一雄さんと元ダイエー捕手香川伸行氏。香川さんは言わずと知れた、ポジション・強打者・体型といった共通点から「ドカベン」の相性で親しまれた方ですね。

・双方のチームを例の毒舌で明るくくさす岩鬼の問題発言続出にアナウンサーは内心「だからおれこいつがゲストは嫌だって大反対したんだ」。
毒舌だからこそ岩鬼のコメントは面白いし、だからこそスタッフに大反対されてもゲストに呼ぼうという声も大きかったんでしょうが、現場の人間にしてみればやっぱりヒヤヒヤものなんですね。チーム内でも結構人望ない感じだし(何かとくさされてる)、遠くで見てる分にはいいけど身近で関わるのは御免ということか。

・絶好調のピッチングを披露する獅子丸。それを見て山田は「やっぱりバッティング投手やらせて投げ込んだのは正解だった」。試合開始前、山田が獅子丸にバッティング投手をさせる光景があり、あのプライドの高い獅子丸にバッティング投手をやらせたことで周囲を驚かせてましたが、体力のある獅子丸だけに投げ込ませた方がいいという山田の判断だったわけですね。ついでに先発ピッチャーは獅子丸じゃないと横浜に思わせる効果も(結果的にか狙ってなのか)あげていましたし。試合開始前からすでに山田の頭脳プレーは始まっている、それを改めて実感させられます。

・二回表に四番山田の初打席が回ってくる。土門心の声「山田・・・オープン戦やオールスター戦じゃない この「真」の勝負をおれはどれほど待ったか」。リーグの違う土門と山田は普段オープン戦やオールスターでなければ戦うことはない。しかしそれらは「真」の勝負の場ではない、という土門の言葉に、野球選手にとっての公式戦の持つ重みが篭められています。

・初対決だけは高校時代の球種で勝負したいという土門を、キャッチャー谷繁は気持ちはわかると言いつつも「この大事な日本シリーズを私物化するな!!」と叱る。「分かりました 谷繁さんにおまかせします」と土門も笑顔で引き下がる。我が儘と知りつつも言わずにいられないほど山田との勝負にこだわるのも、谷繁の正当な、かつ思いやりを篭めた叱責を受け止めて大人しく引き下がるのも、いずれも土門さんらしい。
かつて高一秋に山田と初対戦したさい、吾朗にストレート勝負をガンとして拒否された時も最後は彼に従った。最後はキャッチャーを立ててくれる意味で土門さんは捕手には有難い投手なんでは。

・土門の新球(カミソリシュート)はトレーナーに5球しか投げられないと言われているそう。里中のスカイフォークも一試合に数回しか投げられない設定でしたが、いつのまにか立ち消えていた。里中の体力アップ、スピードアップがたびたび語られているので、そうした成長の中で自然と克服されてったってことなんでしょうが、数球しか投げられない決め球をどこで使うかというハラハラ感、無理して限度以上に投げることで故障するかもしれないという悲壮感はすっかりなくなってしまった。カミソリシュートは現状5球しか投げられない設定は変わってないようなので、このハラハラ感が継続しています。
しかし鉄人と言われた土門にして一試合に5球しか投げられないというのだから、相当(あんな無茶な投げ方してるスカイフォーク以上に)腕に負担がかかる球ってことですね。どんな原理だ?
ちなみに後日、正月恒例の明訓自主トレの席で土門の様子を聞かれた三太郎が「もう完全に手首は治ったらしいがシュート5球限界には情けないと嘆いていたよ」と発言しています。こんな会話をするくらいだから三太郎と土門さんは結構親しく交流してるんでしょうが、しかし他球団、それも同じセ・リーグの三太郎にカミソリシュートの球数制限バラしちゃったのか!こりゃまた無防備な。96年のオールスターの時に山田にさえスカイフォークの投球制限について話そうとしなかった里中とはえらい違いです。それだけ土門さんは三太郎を信頼してるってことなんですかね。三太郎あっさり他の連中にまで(リーグ違うとはいえ)バラしてますけど?

・谷繁はカミソリシュートの制限を知りながらも、初打席が一番重要だからとフォーク、シュート、シュートで三振を取る。貴重なカミソリシュートを二球も混ぜてるのだから、山田をすこぶる警戒してる、逆にいえば最大級に実力を認めて遇しているといえます。しかし土門は内心に「これが勝負なのか チームの勝利のためには己の意地など何の価値もない・・・か」と憮然とした表情。
真にライバルと認めた男と現在の自分の一番いい球で勝負するのでなく高校時代の球種で対決したいと望む。高校時代ついに山田に勝てなかったことへのリベンジという意識があるからでしょうが、貴重な対決の機会にわざわざレベルダウンして戦わないでも。過去の敗北にこだわり現在の勝負を冷静に見据えていない、なんかちょっと後ろ向きな発想です。
ついでに土門の独白の内容に、かつて里中が高一秋に土門を二回連続で敬遠した(させられた)時に「どんなことをしても勝つ・・・・・・・・・それが高校野球なのか ・・・・・・堂々と立ちむかってそれで敗れることもまた高校野球ではないのか」と心に呟いていたのを思い出しました。里中が自分の打席の際に思ったのに近いことを、今度は土門が里中の恋女房だった山田の打席で思っている。少し皮肉なシーンにも思えます。

・二回裏、横浜の四番駒田の打席。一球目はど真ん中の絶好球なのに打たず。山田いわく「良すぎる球はこの人打たないんですよ 難しい球が好きなんです性格的に・・・」。二球目インコースぎりぎりの素晴らしいストレート。これは打つも一塁線へのファールになる。「誰も打てそうもないこんな難しい厳しい球は打つんですよ」と山田。駒田の技術以上に性格を重視してのリードになっているのが(そして実際読み勝っているのが)面白い。
しかし三球目、放送席の三太郎が「目をそらすための外し球だと思いますよ」「ただ外すなら思い切って外さないとね なんたってセの岩鬼と言われている人ですから」と言ったとおりに、山田は外角に外すも駒田は悪球打ちでポテンヒットにする。駒田が読み勝ったというよりむしろ勝負に直接関係していない三太郎が読み勝ったという展開。同じセだけに三太郎の読みに一日の長があった感じです。

・普段は9番の土門が5番で打席に入る。もともと打撃もいい土門のこと、長打を期待されていればこその5番だろうに、まさかの送りバントで駒田を二塁へ進める。それもベンチ指示ではなく土門の独断。続く6番佐伯は2球目をライトへファールフライ。ライト小関捕りに行くが、小関の体勢が悪いのを山田が危惧した通り「加速がついてるから止まって投げるまでに時間がかかる」ため、そしてバックホームするもワンバウンドの球がやや高く足を開いて伸びるように取った山田が上手くブロックできなかったため、タッチアップで走った駒田はホームを陥れることに成功する。
谷繁は「土門 お前の勝利にこだわった送りバントが生きたぜ!!」と土門を称え、土門は「そのこだわりを教えてくれたのは谷繁さんの山田へのリードです」と謙虚に応える。先には憮然とした顔を見せていた土門ですが、ちゃんと学んでいたんですね。
そしてそんな横浜を、山田は内心で「打つ瞬間バットをひと握り余した佐伯さんの謙虚な打法があそこまで飛ばさせたんだ ひとりひとりが自分の役割を知っていてそれが出来るチーム・・・ベイスターズは確かに強い!!」と評価する。台詞の前半は土門の送りバントについてはそこまで評価してないように聞こえましたが、後半は土門のバントも含めての評価ですね。土門も佐伯も自分の意地よりフォアザチームを優先させて結果を出した。野球マンガは(現実の試合でも?)投手と打者の対決にもっぱら注目が行きがちですが、集団競技なのだからチームプレイ、「ひとりひとりが自分の役割を」果たすことによる相乗効果こそが一番の見所なんじゃないですかね。

・横浜が1点先取したところで10人目の選手と言われる大観衆(横浜ファン)の大声援が鳴り響く。おかげで西武サイドは声に押されて外野の声かけが互いに聞こえず野手同士が激突して落球したり、「まかせた」の声が互いに聞こえずお見合い状態でポテンしたりのミスを重ねることに。自軍の守備のときは静かになって球を取りやすくするというのだからタチが悪いというか。ちょっとズルいような気もしますが、それだけ熱いファンを持っていることも横浜の強さ・実力の一角と考えれば納得です。

・そんなこんなで3点献上するはめになって気短な獅子丸がついに切れるが、山田に落ち着かないと交代させると脅され、しばらく間があった後「分かっちゃった山ちゃん」と無理矢理にっこりして引き下がる。
岩鬼相手の時といい、山田はほんと猛獣使いですねえ。岩鬼よりは獅子丸の方が扱いやすいというか、ストレートな脅しが通じる感じですが。岩鬼相手だと時に過分に持ち上げ時に罵詈雑言に近いような台詞を吐き(これは主に中学から高校の初期にかけて)、体を張ってコントロールしなきゃならなかったですからね。

・9番獅子丸の打席のさい知三郎が「一発行けぇ タイタニック打法だあー」と謎の掛け声を。知三郎が「タイタニック」にどんな思いを篭めたのか不明ですが、沈没する船の名前とはいかにも縁起の悪い。隣りの山田も「沈没」と内心に突っ込んでるようですがなぜか笑顔だし。
しかし入団から間もないうちにその強打者ぶりを買われて4番を打ったこともある獅子丸がいまや9番というのは(投手だから当然かもしれませんが)寂しい気もします。

・変化球がまるで打てずに投手転向した獅子丸にストライクのストレートはないと踏んだ山田ですが、土門はいきなりストレート勝負で獅子丸のバットを粉々にしてのける。いかに鉄人土門とはいえあの獅子丸を力で圧倒するとは。
しかしレフトの鈴木尚典がバットをボールと間違って取る間に獅子丸が鈍足を飛ばしてツーベースにするというラッキーが。まさに怪我の功名です。

・と思ったら続く松井の初球攻撃がキャッチャーフライに終わったため、獅子丸は息上がったままマウンドに上がるはめに。投手が足で稼ぐとこれがあるんですよね。もともと巨体だけに足は遅い獅子丸、それも普段はDH制度のために投げる方に専念してるわけですから、なおのこと堪えているはず。

・周囲が獅子丸の体力を心配する中、知三郎がベンチを出る。当然交代と思われて当然の状況ですが、それでもこのタイミングの交代はいよいよ獅子丸がキレるに違いないと岩鬼が期待するところで次回へと引っ張る。結局知三郎は「グローブがなきゃ野球は出来ないでしょ」とグローブ届けたのみでベンチへ戻り何事も起こりませんでしたが、試合の当事者でない岩鬼が「獅子丸がキレる」、乱闘沙汰を期待してるというのが(笑)。血の気の多い男ですからねえ。

・山田はわざとレガーズを切って獅子丸が息整える時間を稼ぐ。その意図は回りにバレバレですが、わざとだと立証できるでもないので特に審判からも物言いはつかない。無印時代から山田は里中の体力の回復を待つため、カッカしてる里中を冷静にさせるためによくこの手の時間かせぎをしていた。
土門は「たいした男だ おとなしい山田が仕事となると鬼になる」と評し、三太郎も「すばらしいとっさの判断だ これは山田の目に見えないファインプレーですね」と褒めるのですが、ただ一人岩鬼だけは「やーまだにそんな計算する頭はないわい 単にデブやさかいにヒモが切れただけじゃい」とひどい言い草。それに対する「と岩鬼ゲストは申しております いろいろな見解があるものですね」という三太郎の流し方がナイスです。

・せっかく山田が時間を稼いだにもかかわらず、横浜のバント攻勢で再び獅子丸の息が荒くなる。そして3番鈴木尚典が獅子丸の股間を抜けるセンター前ヒットを放つ。鈴木は「獅子丸の大きなモーションなら二塁盗める」と考え、それを読んだ知三郎が「鈴木さんはあんまり足は速くないけど走りたがる性格してるぞー 走ってくるぞ」とベンチから声をかけもなお「それでも獅子丸の緩慢な投球動作なら盗める それに注意してくれた方が逆に安心するから盗みやすい」と強気な態度。
獅子丸もなめられてるなあ。打者としても投手としてもバカ力はあるんですがとにかく大味で細かいところをつついて来られると(変化球が打てないのは細かい欠点どころじゃありませんが)まるで弱い一面がある。実際鈴木は盗んで走るのですが、山田の恐るべき強肩で結局2塁でアウトに。獅子丸の投球動作ばかりに気がいって、山田の強肩を考慮に入れてなかったのが敗因ですね。このあたりの駆け引きは『ドカベン』らしいワクワク感があります。

・獅子丸を支えるために何とか援護の1点をと西武守備陣は円陣を組む。かつては(今も?)傲慢な言動でチームの中でも嫌われていた獅子丸をいつか皆が支えようとしているそのチームワークに胸を打たれます。

・土門は三振取りから凡打に打ち取る方針へ転換するも、ツーアウトから山田に場外ホームランを打たれてしまう。これは土門には痛恨の一球でしょうね。これで俄然獅子丸は燃えてしまいましたし。単純なだけに相手の意気を感じたらとことん頑張ってしまう獅子丸は、そんな部分も岩鬼に似ています。

・4回裏は5番土門の打席から。山田「大丈夫・・・気持ちも呼吸も元に戻った」という心の声にかぶせるように土門が打つ。それを受けて山田は内心に「はずなのに・・・・・・」と驚きと意気消沈の声を。山田の二重のファインプレーで調子が戻ったはずの獅子丸からそれでもヒットを放つ。コーチ?いわく「たったの一球でこれからという獅子丸の気持ちを打ち砕いた」。
ここから獅子丸が調子を取り戻していくだろうと見せて再度引っくり返す。しかもその立役者は土門。魅せられる展開です。

・山田は「獅子丸さんの球は決して悪くなかった 打った土門さんがうまかっただけだ 他の打者には今のストレートは通用する」と考え、実際6番佐伯をストレートで誘って内野ゴロを打たせる。しかし4・6・3で併殺のはずが二塁カバーの松井が土門の猛スライディングに足を払われて失敗(二塁フォースアウト、一塁セーフ)。こんな荒っぽいプレーは土門さんには珍しい印象(プロ入り後の彼のプレーを見る機会があまりないので確証はありませんが)。先の送りバント同様、この試合土門がチームの勝利を第一に考えそれに邁進しているのがうかがえます。

・獅子丸は土門のラフプレーを怒るが、山田は審判がアウトにしない以上正確なスライディングだとなだめる。山田にきつくたしなめられた獅子丸は結局引き下がる。この二人、獅子丸のが年上のはずだし日頃の態度もはるかにでかいんですが、いざとなると山田に頭が上がらないのがこうしたやりとりの中から浮かび上がってきます。

・7番谷繁に対し山田は外のボール球を要求。獅子丸は「何を怖がっているんだ 山田」と不服そうだが、見逃しのボールを取った山田は即座に一塁に牽制球を投げアウト佐伯をアウトにする。獅子丸は青ざめつつ「そ そのための外角ボールだったのか」とつぶやく。
怖がってるどころか山田はその強肩を生かして完全に攻めの野球をやっている。それもランナーを殺すことで土門の好プレーを無にし、土門に煮え湯を飲まされた格好の獅子丸の仇をとるため。東尾監督が「獅子丸ーー立ち直れーーこんないい女房いないぜ!!」と叫んだのはまさにそんな山田の気遣いを察してのことでしょう。そして意気に感じる男である獅子丸は「よっしゃい!!」とその後完全に立ち直る。この単純さが彼の欠点であると同時に美徳でもありますね。

・7回表に山田の三度目の打席が巡ってくる。横浜ベンチには投球練習完了した大魔人佐々木がスタンバイ。騒音レベルの横浜ファンの大声援に対し山田はバットをライトスタンドにかざしホームラン予告をする。こんなパフォーマンスを普段山田はやりませんが、これは横浜10番目の選手といわれた横浜ファンに対抗しての行動ですね。

・谷繁は「二打席目は山田にストレートを待たれて打たれた・・・・・・ ならばここもストレートだ」「速球王の土門のプライドを考えれば ここもストレートしかない」とストレートを要求する。一打席目は高校時代の球種のみで勝負したがる土門を「この大事な日本シリーズを私物化するな!!」と叱ってカミソリシュートを投げさせた谷繁が、ここでは土門のプライドを大事にしてくれている。個人的我が儘は許さないと言いつつも、根本のところでは投手の気持ちを大事にする名捕手ぶりが滲み出ている行動です。

・土門のストレートを山田は打ちにいくもののバットが砕けてファールになる。先の獅子丸の打席といい、西武きっての強打者のバットを次々折る土門の剛球の威力のすさまじさを感じます。しかしここも山田が一枚上手で二球目を二打席連続のホームランにする(いい場面なのにしかし絵にはあまり迫力がない。この試合全般にいえることですが。)
この山田の活躍ぶりに獅子丸は「山田ーーしびれたぜーー!!このおれの右腕が折れようが抜けようがお前に預けたぜ!!この試合でぶっつぶしてもかまわんぜ!!」と陽気に叫ぶ。そしてテンション上がりまくりの獅子丸は7回裏を見事3人で抑える。投手の気持ちをコントロールすることについても山田は超一流のキャッチャーですね。

・あと一点差にまで迫った西武。しかし8回裏、獅子丸は8、9番を討ち取るも1番石井に三遊間を抜かれ出塁させてしまう。ここで山田は知三郎のリリーフを決めるが意外にも獅子丸もキレずに納得する。
投球モーションが大きい獅子丸だと走られるからの交代と皆思うが、土門は知三郎にはナックルがある、「波留さんは当然石井さんが走るまで打たない 山田はしかし走らせますよ しかも二盗三盗と・・・・・・ そしてその二球をストレートでストライクをとってきます ランナー三塁ツーストライクでナックル一球勝負ですよ」と主張。「しかしそんなバカな冒険やるかよ」と反論されても「その冒険を平然とやるのが山田です」と穏やかながら譲らない。高校時代からのライバルの言う事だけに土門の読みが正しいのだろうとなんか納得してしまいます。

・投球練習終えた知三郎にゲスト席の岩鬼が「知三郎ーーランナーなんてどうだっていい ツーアウトやバッターオンリーや 二塁も三塁も点を取られにゃそんでええ!!」と(聞こえるわけないが)声をかける。「ちょっと岩鬼さんゲストは中立です」とアナウンサーがたしなめるも「ムリですよこいつには ゲストに呼んだ時からそれは覚悟をしていなきゃ」とあいかわらず笑顔でさっくり応える三太郎。まあ無難な実況を求めるならそもそも岩鬼を呼ぶなって話ですね。
岩鬼の知三郎に対する肩入れの仕方は、もともと知三郎がダイエー入りを希望していた、岩鬼も遠からず知三郎がチームメイトになると思って親身に面倒を見ていたことが作用してるんでしょうが。

・知三郎のいきなりの牽制球に不意をつかれた石井はあえなくアウトに。知三郎は最初から牽制のためにリリーフしたのだった。山田によると「やったー 一度しかできない大勝負 知三郎が決めてくれた」だそう(ガッツポーズで相当嬉しそう)。
小躍りしてベンチに戻る知三郎を獅子丸が「知三郎男だぜ」笑顔で吼えて出迎える。知三郎のリリーフのせいで完投がなくなったのに、そんなことは構わず知三郎のプレーを称える。単純粗暴な男ですが、こういうところが獅子丸の可愛げだと思います。しかし「はい 生まれた時から男です」という知三郎の可愛げない返事はいかがなものか。 

・西武は9回表二死から高木大成がセンター前ヒットで一塁へ。絵に描いたような土壇場で山田の打席が巡ってくるのはお約束とはいえやはりハラハラします。カミソリシュートの限界はあと3回(先の2回も山田に投げている)。谷繁は大胆にもカミソリ三連発のリードを出し確実に山田をしとめようとするが3球目を山田にファールされてしまう。
投げる球がなくなったところで4球目をどうするか悩む谷繁はカーブのサインだすが、土門は全部のサインに首を振り、ためしに出したカミソリのサインに頷く。「お お前 ヒジや手首がいかれてもいいのか」「ど 土門」と動揺もあらわな谷繁を無言で見返す土門。最初は高校時代の球だけでの勝負にこだわった土門が「自分の最良の球で山田を討ち取る」ことにシフトしている。そして故障の危険を冒しての静かな決断。里中もそうですが、故障を覚悟で投げ抜く決心を固めた男の姿は静かながらも悲壮感があって何とも格好良いです。

・山田は「土門さんが決めた4球目は・・・ カミソリシュートだ!!」と的確に読んでフルスイングするもバットの先が当たっただけだった。それでも左中間へボールは飛び逆転ツーランかと思われるが、土門の執念が勝り、レフトの波留がフェンスぎりぎりでボールをキャッチしてついに横浜が逃げ切っての試合終了となる。先に知三郎の牽制球のために、つまりは山田のリードのために打席に入りながらバットを振る機会を与えられなかった波留が雪辱を晴らした格好にもなっています。

・試合後に土門と谷繁の間で「谷繁さん シュートありがとうございました」「何を言ってる そのサインを出させたのはお前だ シュートは欲しかったがおれはその6球目を出す勇気がなかった しかしあのシュート たとえ打ってもレフトファールフライがいっぱいのいい球だった・・・それをあいつは左中間まで持って行くんだから恐ろしい男だ」「はい」といった会話が。もう一歩で敗れた山田にも最後にちょっと花を持たせてるわけですね。土門との4回の勝負は全体的に見るとホームラン二本打った山田が勝ったようなもんなのでいまさら花持たすまでもない気もしますが。

・横浜は3勝2敗で再び横浜スタジアムに戻るが、第六戦予想に反して土門は登板しなかった。結局横浜4勝2敗で日本一になったものの、土門が登板しなかったというのがどうにも引っ掛かる。無理してカミソリシュートを限界以上投げた結果やはり故障してしまったのか。勝利の栄光と引き換えに故障との戦いを強いられるはめになったのか。不吉な想像ばかりがふくらんでしまいます。結局は一時の故障で済んだことが正月恒例明訓自主トレの席で明かされますが。

 


(2012年8月17日up)

 

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