Y・H・ダンディ

 

 『ライザ』(オリジナル版)登場。銀河連邦軍情報局長。通称ライトニング・ダンディ。名前といい外見といい、明らかに聖先生の別作品『スカイホーク・ダンディ』の主人公トマス・ダンディを模したキャラクターだが、見た目も中身もより骨っぽい印象。スカイホーク・ダンディとヤマキ長官を足して2で割った感じというか。ヤマキ長官の方が後発のキャラなので、むしろライトニング・ダンディがヤマキ長官の原型なのかもしれない。かつては前線でならしたらしいから、艦隊や陸戦部隊の指揮をとったり、今回みたいな単独潜入任務とかをこなしていたのだろう。デスクワークが性にあわないのも頷ける。

 そして「死んじまう おれはこんな仕事にむいてないんだ!」という言葉どおり、デスクワークを放り出して捜査に乗り出してからのダンディの生き生きしていること。麻薬商人に対する義憤も正義感の強さも疑い得ないが、彼がアーメッド・サル退治に乗りだしたのは第一に冒険を好む彼の性格がそうさせたのではないかと感じる。

 そんな彼の陽気さやコミカルさが、この作品の雰囲気をからっと明るいものにしている。アルカラを打たれ死を目前にしてさえ、「とにかく(まだ動ける)今のうちに」と薬でハイになりながらもアーメッドを拘束しにかかり、いよいよ禁断症状で動けなくなっても「おれはもうたすからん!」としっかり覚悟を決めていて、泣き言もいわず苦痛で暴れることもしない。彼のヒーローらしい明朗な強さが物語の空気を作っているのだ。

 ラスト、「おれも・・・ぼちぼち引退のしおどきかとも思う」と考えているが、これは情報局長の職を辞すとか連邦軍そのものをやめるとかいう意味ではないだろう。今回のように自ら最前線に出て行くような無茶を止める、以前はあれだけ嫌がっていた「書類の海にどっぷりとつかってる」状況を受け入れるということを指しているのではないか。退屈だが平和な日常を良しとする、守りに入りたい気持ちがダンディの中に生まれた。だからこそ彼はこれまではまったくその気がなかったらしい結婚について真剣に考えはじめている。結婚とは典型的な〈守りに入る〉行為だからだ(実際にはたいていの結婚生活はそんな平和なもんじゃないと思うが)。新任秘書のレダを「前の秘書ほど有能ってわけにはいかない」と一見批判的に評しながら彼女を結婚相手と目しているのも、彼女が特別有能じゃないのがかえって平凡だが幸せな生活を築くうえで望ましいからだろう。

 こうしたダンディの変化は、あやうく死にかけたことで臆病風に吹かれたためではない。おそらく今回の事件──悪の組織を相手に有能な美女をアシスタントに立ち向かうという絵に描いたような冒険を体験したことで、彼の中の冒険心─事務仕事を嫌い危険な前線に立ちたがる気持ちがきれいに燃え尽きたせいではないか。秘書という日常的に側にいる存在でありながらその突出した有能さ(事務能力のみならず腕が立ち度胸があり、しかし女らしく愛嬌があり料理が上手で男を立ててくれる)ゆえになかば非日常に属していたスーパーレディ・ライザには、心惹かれながらも結婚願望を抱くことはなかった。非日常的美女ライザが去ったことで、ダンディの冒険の日々も終わりを告げたわけだ。

「ライトニング・ダンディともあろうものが!結婚のことを考えるなんて!!」と自身の変化にあきれながらも、ダンディは何だか楽しげである。彼の〈プロポーズ〉を無事レダが受け入れてくれるとよいのだが。もっともダンディのことだから燃え尽きたようでいて、結局穏やかな暮らしや平和な家庭をそれはそれとして愛しつつも、いつかまた危険な任務へ飛び込んでいってしまいそうな気もするのだけど。

 

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