『コズミック・ゲーム』

主なキャラクター:ロックリアンナユーリィミゴール将軍バレンシュタインエリカジェフレイザーク

 

 〈人ならざる〉能力を持ってることが知れて養い親に殺されかけたロックは、コロニーを出て行き倒れているところを連邦軍将軍の娘・リアンナに拾われる。彼女の行為で家に置いてもらえることになったロックだが、リアンナに惹かれてゆくほどに正体を知られることへの恐怖もつのらせてゆく。一方のリアンナも何かに脅えているようなロックを守りたいという感情が次第に愛情へと変化してゆく。

 その頃植民星ディナールの皇帝レイザークが地球に宣戦布告。地球軍は予想外の敗退を続け、レイザークはエスパーと断じた連邦軍のバレンシュタイン大佐はレイザークに対抗できるエスパーを探す中で偶然ロックの存在に気づく・・・・・・


作画グループにおける『ロック』シリーズの第四作。第三作である『ジュナンの子』との間で聖先生は少女マンガ誌でプロデビューしていて、それだけにこれまでとは絵柄も作風も大きく変化している。シャープな印象の強かったキャラクターの顔は大分丸みを帯びて、ギャグっぽいシーンを中心に表情が豊かになった。ストーリー面でも短い何気ないエピソードを積み重ねることでキャラの心情に寄り添いやすくなっている。とにかく全体にとっつきやすく、誰にも広く受け入れられやすい作品になった。この〈わかりやすさ〉は既存の、クールな『ロック』が好きなファンには不評であってもおかしくないところだが、元々のファン層にも好評で迎えられたようです。

とりわけ特徴的なのは主人公であるロックのキャラの変化だろう。『ニンバスと負の世界』『この宇宙に愛を』『ジュナンの子』の初期三部作では伝説の超人、基本クールな態度でめったに動揺を見せることのないスーパーマンとして描かれてきたロックが、今回は人と違う能力を持ってしまったがゆえに人間社会から疎外され、孤独と不安に震えている少年として造形されているのだ。オープニングの、ヤギをうっかり死なせてしまった(当時のロックとしてもずいぶん迂闊な話だ)ために育ての親から折檻されたあげくに正体がバレて家を追われ「いつまでこんなことが続くんだろ ぼくはどこへ行ったらいいんだ?」と呟く、この数ページのエピソードだけで、『コズミック・ゲーム』におけるロックのキャラクターが鮮やかに印象づけられる。

今までになく幼く無力なロックを描く必要上、時代は初期三部作よりずっと昔に設定され、それによってロックの使える超能力も大幅に削減(具体的には物語の後半までテレポートが使えない)できたことで、能力面でも〈超人〉ではなく、これまでは大苦戦しているときもどこか危なげない印象だったのが、エリカに出口のない部屋に閉じ込められる場面など本当に危機感を感じさせる。性格的にも能力的にも超人ではない、〈ちょっと余分な力を持っただけのただの人間〉としてのロックがここにはいる。

この新たなロックのキャラクターは非常に魅力的ではあるものの、上で書いたように作風も主人公の性格付け・立ち位置も大きく変えるというのは、小規模ながらも熱烈なファンを獲得している作品だけにずいぶん勇気のいることだったに違いない。ばばよしあき「スーパーヒーロー登場までの光と影」(作画グループ刊『超人ロックの真実』収録)によれば、当時プロデビューしたものの「作品は少女漫画やテレビ漫画が多く、実力も十分に発揮されているとはいえなかった」状況の聖先生をばば氏がかなり強引に説得して『ロック』の新作、すなわち『コズミック・ゲーム』が生まれるに至ったそうだが、プロ作家として恵まれない環境にあるだけに同人作品の『ロック』は自分の描きたいものを描きたいように描く、支持してくれる熱心なファンのためにもこれまでの路線を踏襲した作品(その方が聖先生本来の嗜好にもかなっていただろう)を描くことを選択してもおかしくなかったところだ。

にもかかわらずよりメジャー向けの、万人が入りやすい物語を聖先生は作り上げた。同人作家のスタンスで初期三部作と同色の作品を描くより、プロらしいこなれた〈見せ方〉をする方を選んだ。それは前掲「スーパーヒーロー登場までの光と影」が書くとおり「プロ作家としての意地がプラスされた」ためであったろう。

かくてこれまでの三部作とは大きく雰囲気を変えたこの作品は、今に至るまでファンの間で非常に高い人気を保っている。『少年キング』とその後継雑誌の『少年KING』連載時に発売されたイメージCDのシリーズ(こちら参照)で唯一少年画報社(『キング』『KING』の発行元)刊でないにもかかわらずCD化され、アニメ化してほしいエピソードの読者投票が行われたさいも、『光の剣』『ロード・レオン』についで三位に入っている(すでにアニメ映画化されていた『魔女の世紀』は投票対象外)ことからもその人気ぶりがわかるというものだ。

この上位三作品だが、共通しているのはダブルヒーローもしくはダブルヒロインものだということ。『光の剣』はロックのほかに第二のヒーロー(劇中の役割的にはむしろ真打ち?)のランがいて、『ロード・レオン』も敵ながら実力と魅力の両方でロックと拮抗しうるレオンがいた。そして『コズミック・ゲーム』はリアンナとエリカというタイプの異なる美少女ヒロインが登場し、それぞれの形でロックを愛する。こうしてみると、やはり作品の人気はキャラクターの魅力に負うところが大きいものらしい。

ちなみにダブルヒーローとダブルヒロインの両方が揃っているのが『魔女の世紀』。しかも彼ら二組の恋模様が描かれる。そりゃ真っ先にイメージCD化、アニメ化されるのも無理ないよなあ。

 

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