クリフ

 

 『カデット』『風の抱擁』登場。ミラがその能力によって実体化させたもう一つの人格。実体化しているとはいっても第三波動によって生み出された異なる時間流に存在するため、ミラ以外の人間には見えない。

 クリフいわく「僕は君の創り出した「他の人には見えない」存在」「誰でも心の中には 僕のような「存在」がいるものさ」。要は空想上の友達、いわゆるイマジナリーフレンドにあたる存在という事だろう。多くは幼少期に現れ、成長とともにいつのまにか消えてしまう遊び相手。私自身も覚えがあります。今回調べてみたら、イマジナリーフレンドは男子よりも女子、長子や一人っ子に多く存在し、同性・同年齢のケースがほとんどらしい(私の場合は十歳近く年上の、遊び相手というより相談相手でしたが)。また大人になっても、またはなってからイマジナリーフレンドが現れるケースもあるそう。ミラの場合一人っ子・同性というところは当てはまらないが、幼くして亡くなった双子の兄がいたために、兄クリフをイマジナリーフレンドのポジションに持ってきたのは自然な流れだろう。 

 ──そう思っていただけに『風の抱擁』でクリフが亡くなった当時5、6歳にはなっていたらしい(見た目からの判断)のを知った時は意外に感じた。ミラが物心つく前に亡くなって実際のクリフを覚えてないからこそ、自由に(自分に都合良く)性格設定できるイマジナリーフレンドになり得たのだろうと思っていたので。実際のクリフと遊んだ記憶があり、というより昨日まで兄妹・遊び相手としてすぐ側にいた存在が事故死という形で突如消滅したと思ったら自分にしか見えない形で存在するようになった、となったらまずは幽霊、クリフの魂が自分の元に帰ってきてくれた、という解釈にならないものだろうか?

 まあ考えて見ると『超人ロック』のストーリー中に死者の幽霊、残存思念といった霊的存在が出てきた事はないような気がする(あえて言うなら『冬の惑星』でロックがストロハイム大佐が操るニケに殺されかけた時に現れたエレーヌくらいか?)。遠い未来が舞台なだけに幽霊などは否定されている世界観なのかもしれない。

 だとしても、現在自分の傍らにいるクリフは死んだ兄その人ではなく彼の姿に仮託して自分が作った実在しない人格だとはっきり自覚している(「僕は幻なんだ もうひとりの君なんだよ」)、そしてロックに惹かれ始めたのと入れ替わりにクリフが消えた(「今まで 君は一人ぼっちだった だから僕が必要だったんだ」)という事実は、一見能天気にも見えるミラの深い孤独を突きつけてくる。加えてロックと出会い恋仲になった事で彼女の孤独が癒されたかといえば・・・。もしクリフが消えずその後も彼女に寄り添い続けていたなら、『風の抱擁』での彼女の苦しみはいくらか軽減されただろうか。

 

 

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