ジャック・ハル(クリストフ・アシダ)

 

 辺境惑星では名の売れた傭兵(?)。“死神”の異名で恐れられている。その正体は二年前に死んだとされるクリストフ・アシダ中尉。よって本当は外見より大分若いんじゃないかと推測される。スコラ版以降の書き足し部分で、彼が以前世話になったブラスター・ジャック・ハルの名をついで第二のブラスター・ジャックになったことが明かされたが、たかだか二年弱(書き足し部分ではなぜか五年)で“死神”としてのネームバリューを確立したというのは無理があったのでこの設定には納得。

 任務中、敵接近の警報を出すことを躊躇した(スコラ版の書き足しを読むまでは、てっきり海賊船にやられたというのは表向きで本当はヴィニの住む惑星フォーブルと何らかの事情で戦闘状態になっていて、警報を出すことでフォーブルに被害を出す可能性があったために躊躇ったのだと思っていた。警報を出すかどうかの場面でヴィニを思い出すシーンが入るんだもん)ために仲間たちを死なせる結果になってしまったことに苦しみ、自分を責め続けて逃げ回ったという彼。いかにもハードボイルドな堂々たる態度やクールな性格の裏にこういう弱さを抱えてるというのが、何というか、セクシー。強い部分と弱い部分の落差が彼のキャラクターに深みを与えている(個人的には上掲の彼がジャック・ハルになるまでの経緯が詳しく描かれない方が、彼の苦しみの詳細がわからない分よりミステリアスな雰囲気が増したのではないかと思う)。

 仲間を死なせた間接原因である(?)ヴィニのことは、過去を封印しブラスター・ジャックとして生きる彼にとって最大のタブーだっただろう。ゆえに彼女を思い出したことで正気を取り戻したし、真人間としての生活に戻る気にもなったわけだが、それでもヴィニが止めるのも聞かずケンジとの決闘に赴くあたりは、ブラスター・ジャックとして生きた日々が培った、裏稼業ならではの仁義・けじめの取り方を―クリストフ・アシダとしての自分よりブラスター・ジャックとしての自分を優先させたということなのだろう。こうした“男の美学”が実に格好よいのだった。

 

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