ユージン・バーダル

 

『ソード・オブ・ネメシス』『オメガ』登場。「ゴダン」の研究員で、義父のファン・エステベスともども「生きている岩」の研究に従事していた。一度中止になった「岩」開発のプロジェクトが極秘で再開され軍事目的(某惑星で内乱を起こさせる目的)に利用されようとしてると知って、義父とともにこれを告発として会社から追われる身となる。妻子を逃がしたのち逮捕された義父を救いに向かいそのまま行方不明に。8年後に「むこうの世界」で義父とともに研究所らしいところにいるのをロックが発見、救出する。

 「岩」によって切り取られたゴダンの研究所の一画とともに「むこうの世界」に持ってかれたということは、義父を救おうとして逆に捕まったうえ、義父ともども(おそらくは互いの命を楯に)脅迫されて結局研究に協力させられていたのだろう。そして研究中にに過って「岩」の力で「むこう」に飛ばされたといったところか。このあたりはやはり「岩」の研究中に「むこうの世界」にとばされたハンザ博士と共通している。ただ違うのはハンザ博士の行方不明期間が「こちらの世界」でのせいぜい数週間程度だったのに対し、彼とエステベス博士は8年ものブランクができてしまったこと。奥さんのソニアは昔と変わらず美しい(現代よりずっと寿命が長い&若返り技術が進歩している時代なので)もののさんざん修羅場をくぐり抜けた分相当精神的に逞しくなってたろうし、娘のアミナなどまだ幼く可愛いさかりだったのがすっかり思春期のいい娘さんになってたしで、戻ってきた当初は大分とまどったことだろう。戻ってきたあと家族と過ごすシーンがあまり出てこないので、そのあたりの戸惑いも観てみたかった気がする。

 上で書いたように会社の悪事を知って義父ともども告発に動き、捕らわれた義父を同志とともに助けようとする、勇気も正義感も行動力もある実に立派な人物だと思います(もちろんエステベス博士も)。義父と同じ会社で同じ分野の研究をしているわけだから、おそらくエステベス博士が部下ないしは後輩だったバーダル博士を気に入って娘と引き合わせて結婚に至ったのだろう。エステベス博士はいい婿を選んだ。本人もそう思ってるんじゃないかな。

 とはいえ「むこうの世界」との「境界」による「こちらの世界」浸食が進行してる最中に、学術用のコンピューターを借りてハンザ博士から送られてきた「仮説」を検証しようとする、人類の危機の最中にその危機の元凶となっている物質の有効利用に気持ちが行っているあたりは、義父ともどもハンザ博士と同じく一種の研究バカではある。「岩」の危険性はよくわかっている、悪用されようとするのを身を挺して止める正義感も持っている、しかしその危険性の中に〈希望〉を見出し行動に移そうとする。ハンザ博士の項でも書いたが、こういう人は社会に必要なのだとは思う。一歩間違えば大惨事を引き起こす危険と隣り合わせではあるけれど・・・。

 

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