アモン

 

 『エネセスの仮面』登場。連邦軍情報部特務班に所属するエスパー。宇宙海賊「エネセス」を倒す任務を負って「エネセス」に潜入。5年間をエネセスで過ごしたのち、エルザとの出会いと彼女の死をきっかけにエネセス暗殺に踏み切るが、かえって彼に「チャンス」を与えられ、エネセスの仮面を受け継いでエネセス艦長として生きる道を選ぶ。

 特務班での汚い仕事にうんざりしながらも「連邦がちゃんとうまくやってくためには(中略)誰かがやらなくちゃいけないんだ」「世の中がおれたちを 必要と・・・ 必要としているんだ!」と自分を納得させて危険な任務に従事するあたり、基本的に真面目で正義感が強い。仕事で何人となく殺しながら、いちいち自分に〈社会のために必要なこと〉と言い聞かせなければならない、人殺しへの抵抗感を失わないのも彼の正義感の表れであろう。

 だから「エネセス」に潜入して海賊の一人として働く―抵抗する相手は容赦なく殺しているので、これだって汚い仕事といえばそうなのだが、エスパーを道具として扱うような「会社」の船を襲い物資を強奪するのは痛快であり、自由のために戦っているという手ごたえがあったのでは。アモンが行動を起こすまで5年も沈黙していたのは「エネセス」での生活が今までになく心地よかったからで、エルザがやってこなければエネセス暗殺に踏み切るタイミングのないまま、死を目前にしたエネセスに呼び出されて仮面を譲りたい旨を切り出されてたんじゃないだろうか。

 そんな彼があえて居心地のよい暮らしを放棄しても本来の目的に立ち戻ってエネセスを殺そうとしたのは、エネセスを仇と狙いながら復讐を果たせず死んでいったエルザのためだったろう。上で書いたようにアモンはもともと正義感の強い、気持ちの優しい男であり、あんな少女が無念のうちに死んだこと、やむをえなかったとはいえ彼女を射殺し宇宙に捨てさせたのが自分だったことで、彼女に負い目を感じてしまった。その分エルザの悲願を果たしてやろうと考えたのだ。

 ところが事態は意外な方向に進み、結局アモンに〈チャンスを与えるため〉自害した艦長のあとをついで皆には正体を伏せたまま次代のエネセスを名乗ることになった。上で〈エルザが来なければエネセス暗殺を実行することなく仮面を譲る話を持ちかけられたのでは〉と書いたが、その場合アモンがすんなりとそれを受け入れたかどうか。彼は5年間エネセス討伐の任務を実行できなかったが、同時に任務を完全に放棄して心からエネセスの一員となることもできなかった。いわば身の振りようを決めかねたままモラトリアム状態にあったのだ。危険かつ汚い任務に嫌気がさしていても仲間の悲惨な死に様を目撃してもなお特務班エスパーとして勤め続けたのは、真面目な性格ならではの連邦軍に対する忠誠心と自分は連邦にとって世の中にとって必要な人間だという自負心があったからだろう。心の底ではエスパーなど連邦にとっても世間にとっても使い捨ての道具に過ぎないと気づいていたろうが、それを認めてしまうのはあまりに惨めすぎる。だからその残酷な事実に気づかぬふりをして連邦軍のため尽力してきた。

 しかし「エスパーは道具なのだ」というエネセスの言葉、それを裏書きするようなエネセスの無惨な素顔とエルザの死に様、「エネセスの仮面は(中略)自由に生きるためのもの」というロックの後押しもあって、人間たちにとってエスパーは道具でしかないという現実を受け入れ、それに抗して生きると腹をくくった。アモンは艦長やその前の艦長のように細菌に冒されているわけではないから、その後も長くエネセス艦長を務めたものと想像される。『星と少年』に登場するキャプテン・ノームはエネセスの残党で、エネセスは連邦のスパイのせいでノームを残して全滅したと話しているから、結局数十年のうちにエネセスは掃討されたわけだが、その時の艦長がアモンだったのかどうか気になるところである。

 気になるといえば、結局アモンはどんな超能力を持っていたのだろう。冒頭のロボット兵との戦いもターゲットの人物を倒すのも、エルザを殺したのもエネセスを殺そうとしたのも全て銃である。エルザの体内に爆弾が仕掛けられてるのに気づくシーンで彼女を透視しているのと彼女と声を出さず会話しているからテレパシーが使えるのは確実だが、アモンの能力としてはっきりわかっているのはこれらだけである。特務班のエスパーなんだから、『アウター・プラネット』のフランシス大尉率いるエスパー部隊を考えても、サイコキネシスとテレポートくらいはできそうな気がするのだが。

 

 home

 

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO