『赤いサーペント』

主なキャラクター:ロックリオラクーガージョアンワキ・シン、キャンサー、リュカーン

 

 リュカーンが最後に言い残した次のクローン「赤い太陽のサーペント」を探して旅していたロックは、ESPハンターに追われていた少女・リオラを助ける。リオラは幼い頃リュカーンに会ったことがあった。育ての親を失ったリオラをロックはSOEの星へ連れていくことに。

 一方、砂竜ハンターのジョアンとワキは行き倒れ?の少年エスパー・クーガーを拾う。クーガーは名前以外の記憶がなく心身耗弱状態だったが、繰り返される「暗示」によって正気を取り戻し、強力なESPと「意志」の力でかつてのリュカーンの部下たちを集めて反帝国運動を起こす。

 その頃、燃料補給のために立ち寄った星で奇妙な「暗示」に脅えたリオラは別人格となって街で騒ぎを起こし、ロックは彼女もクローンの一人ではないかと考えはじめる・・・。


 すごーく好きな話です。帝国シリーズ中では一番かもしれない。じんとする名セリフやシーンもたくさんあって、特にリオラVSクーガーから先は全部これ名シーンといってよい。

 普通の(とは言いきれないけど)少女として育ったリオラと最初の不都合をクリアしたあとは使命を果たすことに邁進したクーガー、2人の「不良品」クローン―全然違う軌跡をたどった二人に共通するのは最終的に人間的な愛情を使命に優先させたこと。使命とは無縁に人間に育てられたリオラは無理もないが、クーガーの場合は最初記憶を失っていたあたりが大きいのかもしれない。「目覚めた」後のクーガーの変わりようをみると、彼本来の性格と使命はおよそ不似合いだったのではないかという気がする(リュカーンは性格と反帝国カリスマとしての使命が上手く合致していたと思う)。当初の記憶喪失と混乱ぶりは、クーガーの精神が外から押し付けられる「使命」に必死で抵抗していた結果なのかも。

 結局その抵抗は崩れたが、彼本来の人間性はジョアンへの愛着という形でなお残った。そしてジョアンが死んだとき、この本来の心が「使命」に再び抵抗し始めた。この時点で彼は真の意味で「不良品」となったのだろう。ロックの命を助けてしまったのがその象徴だ。そしてここで「良品」である「守護星キャンサー」が現れる。出番が少ないので決め付けることはできないが、彼女にはリオラやクーガーのような甘さは感じられない。だからロックも彼女のことは(すでに「書を守る者」のクローンは遺伝子的には自分のクローンのクローン、我が子のような存在と知っていたにもかかわらず)迷うことなく一撃で倒したんではないだろうか。

 そしてキャンサーからの攻撃を経て、クーガーはリオラと同じように「自分は物じゃない」と叫ぶに至るのだ。この後半部は、ロックとの交流を糧に暗示をはねのけたリオラの葛藤、ジョアンの死に始まるクーガーの葛藤が細かく描き出されていてとても切ない。そして「ぼくはいったい なんのために生まれてきたんだ?」「「生きる」ためだ。人間として生きるために・・・」の場面はまさに最高のラストシーンだった。道具として処分されることに抵抗したクーガーは、すでに人間として生き始めていたはず。そんなクーガーを許し受け入れたロックの心の広さが、この一言に集約されている。

 ところで先からクーガーの「本来」の性格などと書いているが、クローンの教育プログラムがちゃんと働いていれば、彼はもっと迷わざるカリスマたりえていたろう。こうも「ミス」が相次いだ(クーガー、リオラ、おそらくリュカーンも)のはおそらくは銀河コンピューターの干渉によるものだったと思われる。つまりリオラやクーガーがあれだけ魅力的なキャラクターになりえたのは銀河コンピューターのおかげということに・・・。そう思うと銀河コンピューターに感謝せざるを得ない気持ちになるのだった。

 

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