映画版・『亡国のイージス』公開1周年を記念して、日本アカデミー賞授賞式の様子やら以前にUPした内容の捕捉やらを書いてみようと思いつつ・・・早くも3ヶ月近くが経過してしまいました(汗)。ほとんど公開終了1周年記念になってしまいましたが、つらつらと取り止めもないことを書き連ねてみます。

先にUPした文章に捕捉説明を加えたのは以下の箇所です。※1 ※2 ※3 ※4 ※5

 

11/1追記−10月29日『イージス』地上波初の放送がありました。キャストのインタビューなどはありませんでしたが、ほとんどノーカットに近い状態(オープニングとエンディング、日常の会話シーンがちょこちょこ切られてたくらい)で放送してくれたのは有難いかぎり。世間の評判は見事に賛否両論のようですが、それだけ見た人は多かったということで。やっぱり地上波というのは威力があるなあ。それはともあれ、さらに2箇所追記加えました。 ※6 ※7

 


日本アカデミー大賞授賞式

 

 入場の場面から笑わせてもらいました、イージスチーム。真田さんと中井さんがインタビュアーの発言(「映画の中では勝地さんが影のリーダーという感じでしたが」)を受けて、阿吽の呼吸で勝地さんをからかっているのが微笑ましい。勝地さんが「ちょっと待ってください・・・」と照れ笑いしてるのも微笑ましい。本当に仲の良さそうな三人でした。ちなみにジャパンプレミアの時には真田さん中井さんに佐藤浩市さんも加わって、ファンの方たちの「リョウくーん」コールを真似て口々に「リョウくーん」と勝地さんをからかう光景が見られたとか。←※出典の記事ようやく見つけました。これです。この場面もDVDの特典映像に収録してほしかったなあ。

 

・優秀新人賞 (勝地涼)

 噛んでなかった!!(笑)・・・いや、これまで舞台挨拶でも製作発表でも、私の知るかぎり100%台詞を噛んだり言葉に詰まったりしていたもので。この大舞台(授賞式のたぐいは初めてだったはず)ではさぞかし緊張の極みだろうと思ってたんですが、緊張しながらもきちんと話せていました。それどころか朗らかな笑顔さえ見せていたのに驚き。新人賞受賞者で、声を出して笑っていたのは彼一人でした(後日BS日テレで放映されたノーカットバージョンでは、真田さんのコメントを聞いているとき今にも泣き出しそうな顔になっていてハラハラしてしまいましたが)。そして客席から壇上の勝地さんを暖かい目で見守っていた真田さんと中井さんの姿が印象的でした。入場の場面といい、メインキャスト唯一の十代だった勝地さんが回りから可愛がられていたのがうかがえます。

 

優秀助演男優賞 (中井貴一)

 原作にも増して冷徹でありながら、心の奥には祖国や部下、妹に対する熱い思いを秘めているヨンファを演じきった中井さん。しかし役のイメージに反してご本人は大分ユーモラスな方な様子。「北の零年チームに比べて、見てくださいよ、うちのむさ苦しいこと」というコメントには笑いました。中井さんの発言を受けて真田さんが「まったく同感です」と答えていたのにも。確かにイージスの席はオール男性、黒づくめでしたからねえ。長年の友人であり共に芸能界の第一線で活躍している真田さんと(本格的には)映画初共演というのは意外でしたが、考えてみればお二人とも主役級の役者であるだけに、予算の面でも配役のバランスの上でも同時に起用するのは難しいんでしょうねえ。この二人に加えて寺尾さん、佐藤さんというこれも主役級の役者さんを一気に揃えながら、作品のバランスを崩すことなく相乗効果を生み出した『イージス』という作品の凄さを改めて感じました。

 

・優秀主演男優賞 (真田広之)

 子役時代の映像を初めて見ました。可愛いですねえ!やはりどことなく面影があるような気がします。私は日頃あまりドラマや映画を見ないので、真田さんには若かりし頃のアクションスターとしてのイメージ(『里見八犬伝』『魔界転生』など)を長らく持ち続けていたんですが、『たそがれ清兵衛』で中年男の侘しい生活感と一本筋の通ったストイックさをしっとりと演じているのにうならされました。今やすっかり日本を代表する名優の一人ですよね。壇上では無論のこと、客席を立ち上がるときの動作や表情にまで男の色気とオーラが満ち溢れていて、スターとはこういう人のことを指すのだなあとつくづく思ってしまいました。勿論その裏には役作りや生き方そのものに対する弛まぬ努力があるわけなんですが。今年度はブルーリボン賞も受賞してらしたんですが(勝地さんもブルーリボン新人賞の候補に上がっていました)、その時のプレゼンターが寺尾さんで、受賞時に「先任伍長、いただきました!」と言われたとか。中井さんに劣らずお茶目な方だなあ。アカデミー賞もこれまた寺尾さんがプレゼンターだったので最優秀に選ばれてたらきっとまたこの台詞が聞けたはず。その時のイージスチームの反応が見たかった。うーむ惜しい。

 

・優秀音楽賞 (トレヴァー・ジョーンズ)

 この映画は音楽抜きには語れない!といいたくなるほどに素晴らしかった『イージス』の音楽。メインテーマの変奏を他の曲にも応用することで楽曲全体に統一感を持たせつつ決してワンパターンに陥らない。物語の邪魔になることなく、静かに場の緊迫感を盛り上げる。そして『イージス』の雰囲気に見事にマッチした一種荘重な重厚感――最優秀取ってほしかったなあ。個人的には「抜錨」(FTGが《いそかぜ》に乗り込んでくる時の曲)がとくに好きです。

 

・優秀監督賞 (阪本順治)

 映画化の話が何度も持ち上がりつつ一向実現せず〈映像化不可能〉と言われた作品に、海上自衛隊全面協力&超豪華なキャスティングのもと挑むこととなった阪本監督。それはそれは大変なプレッシャーだったと思います。にもかかわらず(中井さんの項でも書きましたが)、両雄どころか四雄を並び立たせてこれだけ重厚な映画を作り上げた手腕に拍手。もちろん原作ファンとして「あそこの場面が削られている!」的な不満点も随所にあるっちゃありましたが、映画ならではのいいシーンもたくさんあった(とくにヨンファとドンチョルの場面)。何といってもこの作品には俳優陣に対する厚い信頼が感じられる。変にケレン味のある演出をせず、抑えたトーンの中で個々の役者の表現力を際立たせている。それは行が母親の自殺死体を発見する場面で勝地さんに与えた「何もしなくていいわけじゃないけど何もするな」という指示、渥美と瀬戸が現代日本について語り合う場面で佐藤さんと岸部さんに自由に喋ってもらったことに集約されているように思います。きっと役者さんたちも、それぞれ十二分の実力を持った方々だけに、演じ甲斐があったんじゃないでしょうか。大好きな小説『亡国のイージス』を素敵な映画に仕上げてくださって、有難うございました!


改めてキャスト(一部)について追加コメントを。

 

真田広之さん。原作の〈親父〉イメージには格好良すぎる真田さんが仙石役に選ばれたのは、演技力以上にアクションスターとしての能力を買われたからかと思います。それも自身がハードなアクションをこなせる(しかも格好良すぎない程度にコントロールしながら)というばかりでなく、〈如月行を演じる役者のフォロー係〉としての役割も期待されてたのではないかと。行役は必然的に若手俳優を起用せねばならず、それも演技力第一で選ぶならアクションは(最低限の運動神経は問うにしても)素人である可能性が高い。専門のアクション指導の人が付くとはいえ、行と一番絡みの多い仙石役がアクションに堪能な真田さんだった意味は大きいと思います。勝地さんがインタビューで〈上手く動けなかった時、真田さんが「こういう風にすればいいんだ」と言葉だけでなく実際に動いて手本を見せてくれた〉と話しているのを読んで、つくづくそう感じました。華麗なアクションシーンを披露してくれた〈勝地行〉ですが、それも〈真田仙石〉あればこそ。とくに機械室で通信機を奪い合うシーンや「俺の足を引っ張るな」の前後などは、思いきりぶつかって行きさえすれば、あとは真田さんが上手にさばいて〈見られる〉場面として成立させてくれるという安心感があったんじゃないかと思います。先任伍長、グッジョブ!

 

佐藤浩市さん。佐藤さんの演技を初めてちゃんと見たのは確か深作欣二監督の映画『忠臣蔵外伝四谷怪談』でした。二枚目だし演技も上手いし、でも〈色悪〉民谷伊右衛門としてはちょっと色気が足りないかな?(偉そうな)と思った記憶があります。しかし二年前に大河ドラマ『新選組!』で久々に佐藤さんの演技を拝見して、その凄みある色男っぷりにびっくり。いつの間にこんな色っぽい俳優さんになっていたのかと驚きました。原作の渥美は生真面目で正義感が強く有能であると同時にもひとつ優柔不断なお坊ちゃん気質で、〈できる男〉な部分と妙にナイーブな頼りない部分のギャップから生じるなんとも言えない色気が、清潔感と同居しているような男なのですが、映画の渥美は原作に比べ葛藤を見せる場面が少なく、精神的弱さの部分はあまり描かれてなかったように思います。にもかかわらず、映画の渥美にはやはり男の色気があった。とくに色気を感じさせるような言動があるわけではないのに、佐藤さんの佇まいそれ自体からなんとはない色気が発散されているような感じでした。単に話題性(集客力)だけでアカデミー賞主演男優賞受賞者四名を揃えたのではなく、ちゃんと適材適所のキャスティングになっているのがわかります。とくに葛藤を示す数少ない場面、「平和ならそれで国って呼べるのか?」のくだりの、投げやりなようでいて生来の正義感ゆえの苛立ちを感じさせる声音と目付きはまさに原作からイメージされる渥美そのものでした。

 

安藤政信さん。最近映画『バトル・ロワイアル』を見返す機会があったのですが、冷酷無比・正体不明の殺人鬼を演じていて、その不気味な迫力に圧倒されました。『イージス』でも大概無口でしたが、『BR』では全く台詞が存在しない。表情も基本的に能面のごとき無表情。とくに出演場面のラスト近くでのガラス玉のような目には(メイクのせいもあるのでしょうが)驚かされました。『イージス』でも無口で表情に乏しい戦闘マシーンという部分は共通した役回りでしたが、ヨンファがらみで見せる情の部分、竹中船務長に銃を向けるシーンや自決直前にヨンファを見つめる場面での、時に強く時にひたむきで哀しい眼差しが、それまでの冷徹さとのコントラストで殊更強く印象に残りました。この目の表現力といい、秀麗な面立ちといい、運動能力といい、5年前なら彼が如月行を演じるのもありだったかも。

 

チェ・ミンソさん。ジョンヒ役のために長かった髪をばっさり切り、8sものダイエットを敢行したというのに頭が下がりました。しかもカナヅチ+視力の悪さを押して水中での格闘シーンに挑み(実際おぼれかけたらしい)・・・。こんなにも体を張って役に臨んだというのに映画ではジョンヒが何者なのかほとんど描かれないため、〈ジョンヒは削ったほうがよかったんじゃないか〉と言われてしまったり、国では〈右翼映画〉に出たと言ってバッシングを受けたり・・・なんか報われてないなあ。確かに物語のバランス的には、ヨンファの情の部分はもっぱらドンチョルとの関係の中で描くことにしてジョンヒの存在を削ってしまったほうが良かったのかもしれませんが、ヨンファがこれまでの戦術を全部捨てて海上でGUSOHを解放しようとする程自暴自棄になったのは、ほかならぬ妹、女兄弟が死んだからこそだったと思えるので(これが弟だったらもう少し反応が違った気がする)。作中ではにこりともしないジョンヒですが、怪我の手当てをするシーン、回想の横浜スタジアムなどヨンファと二人のシーンでは笑ってはいないものの表情が柔らかで少し甘えた感じさえある。相手に根源的な信頼感を持っているというのがよく伝わってきて、それ以外の場面では戦闘マシーン然としているだけに、あどけない表情がいっそう心に残る。アクション場面での体のキレといい・・・いい女優さんだなあ。そしてメイキングなどから窺える素顔の彼女は、にこにこしたとても可愛らしい女性なんですよね。(水中キスシーン撮影の時の「ハズカシー」と顔おおってるところとか)。中井さんたち某国工作員組が役柄上真田さんたち《いそかぜ》組と撮影中距離を置いていたなか、一人ミンソさんだけが気軽に《いそかぜ》組のほうにも出入りしていたそう(勝地さんとは姉弟のように仲が良かったらしいですが、この二人何語でコミュニケーションしてたんだろ?片言の日本語かな)。ところで書きながら思いましたが、〈工作員としての顔と身内に見せる顔のギャップ〉という点でジョンヒは行と似ている。〈心を許してる〉感じをいかにもな笑顔ではなく目や表情のちょっとした和らぎで表現しているところも。原作では〈相似た魂〉として共鳴しあう二人ですから対比的に演出したのか。もしくは役者さんの資質が似てるのかも。

 

そして最後に――ほとんど映画の感想の域を出てしまうのですが・・・・・勝地涼くん。

私は日頃あまりドラマや映画を見ないので、『イージス』で初めて勝地涼という役者の存在を知ったのですが、出演作品を全部追いかけたい気持ちになった俳優さんは彼で二人目です。映画の公開初日、彼の演じる如月行を初めてきっちりと見て真っ先に思ったのは、〈芸能界は広い〉ということ。映画化にあたって、おそらく原作ファンの誰もが一度は「〈あの〉如月行を演じられる役者が実在するのか!?」という懸念を感じたことがあったんではないでしょうか。私自身、〈アイドルを思わせる整った容姿〉〈工作員といって通用する運動能力〉そして何より〈言葉に拠らず複雑な内面の動きを表現できる演技力〉を兼ね備えた若手俳優なんているんだろうか?と思ったものでした。・・・いたのである。それも17−18歳という若さで。「キャスティングについて」でも書いた通り、〈勝地行〉は原作からイメージした行の外見とは違っていたのですが、その代わり限りない意志の強さと人一倍の繊細さをあわせ持つ行の〈内面〉をそのまま具現化したかのような〈外見〉を持っていた。きりっとした眉とやや吊り気味の切れ長の目は男性的なのに、頬から顎にかけての柔らかいラインは少女のようでさえある。相反する二つの要素が少年から青年への移行期にある彼の中で微妙なところでバランスを保っている。その微妙な不安定さが行というキャラクターの持つ〈危うさ〉に上手く嵌っていて、その意味では私にとって勝地くんはビジュアル面でもまさに如月行その人でした。そしてよく言われることですが、彼の目。〈鋭い〉というより〈強い〉目、〈射抜く〉というより〈叩きつけてくる〉ような視線に圧倒されました。それもただ強いだけでなく、時として哀しみや捨て切れない情が底に揺らめくような・・・。なのに本人はいかにも育ちの良さそうな(暖かな家庭の匂いのする)優しげな青年なわけで。しかもかなりの天然さん。いったいこのふんわりした男の子のどこからあの目力が出てくるのだろう?『イージス』以降、彼の出演作品をいくつか見ましたが、役に応じて見事に目が違う。顔つきが違う。まだまだ未熟な部分もたくさんあるけれど(今でも十分上手いんですが、もっともっと上に行けるポテンシャルを感じさせる人なので)、きっと20年後には『イージス』で共演した方々のような、日本の俳優界を牽引する役者の一人になっているものと確信しています。彼についてはまたいずれ機会があれば場を改めて書いてみたいと思っています。

 

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